2タッチ入力と端末選び(2009〜2010)

ようやく冬モデルが揃ってきたので、今年もこのエントリを上げることになりました。
国内メーカーの殆どの機種に採用されたことで、今年もより選択肢が増えてきたことかと思います。
しかし、どこのメーカーを選べばよいのだろうという方々もいらっしゃるはずです。


今回は、2タッチ入力に関する主な入力補助を表にし、メーカ毎に対応の有無を見ていただくことで、端末選びの参考にして下さればよいかと思います。


解説する順番は、上から

  1. NTT docomo
  2. au by KDDI
  3. ソフトバンクモバイル

となります。

修正

02/25 FのUnDo回数に間違いがあったため、修正。
 コメントいただいた方、情報提供ありがとうございます。


ここで取り上げる入力補助の一覧

今回のエントリで表に挙げる機能は、以下となります。

1.英数字、記号入力による強制確定の回避
変換前の文章が、操作ミス等で英数字や記号を入力してしまったことで、強制的に確定(本文へ反映)しないか。

 ○・・・確定しない
 ×・・・(強制的に)確定してしまう

2.[*]キーによる濁音化および小文字化の対応
[*]キーで濁点付き(は→ば→ぱ 等)や小文字変換(や→ゃ 等)が可能か。

 ○・・・可能
 △・・・一部可能
 ×・・・不可

3.句読点のダイレクト入力
句読点も2タッチで入力可能(配列に入っている)か。

 ○・・・可能
 △・・・可能だが制限有り
 ×・・・不可

4.インライン入力の対応
メール作成時に、変換用の小窓が画面下部に現われることなく本文へ直接入力可能か。

 ○・・・対応
 ×・・・非対応

5.ソフトキーによるカナ英数変換の可否
かな文字を入力してから、ソフトキーで英数字等に変換可能か。

 ○・・・可能
 ×・・・不可

6.Nキーロールオーバーの搭載
2つ以上のキーを同時押ししても入力可能か。

 ○・・・可能(搭載)
 ×・・・不可(非搭載)

7.英数字の大小変換および全角/半角への変換
英数字の「大文字→小文字」への変換および「全角→半角」への変換に対応しているか。

 ○・・・全て可能
 △・・・大小変換のみ可能
 ▲・・・全/半角変換のみ可能
 ×・・・不可能

8.2タッチ以外での英数字の入力手段
メニューを開くことなく、英字トグルやT9等に素早く切り替えて英数字や記号を入力可能か。

 ○・・・可能
 ×・・・不可

9.2タッチ入力のガイド表示
2タッチ入力で、次に入力する文字の一覧が表示可能か。

 ○・・・可能
 ×・・・不可

10.UnDo機能
特定のキーを短押/長押することで、確定後の文章を取り消すことが可能か。

 ○・・・複数回可能or確定UnDo
 △・・・1回のみ(Ctrl+Z相当)
 ×・・・不可

11.予測変換の完全カット
予測変換のウィンドウを表示させず、通常変換のみを使用できるようにする設定が可能か。

 ○・・・可能
 ×・・・不可


NTT docomo

2タッチ入力を採用しているメーカは以下の4社。
F:富士通
N:NEC
P:パナソニックモバイルコミュニケーションズ
SH:シャープ


docomo 機能対応表

機能/メーカ SH
1.強制確定回避 × ×
2.*キー変換
3.句読点ダイレクト × ×
4.インライン入力 ×
5.ソフトキーカナ英数 × ×
6.Nキーロールオーバ × × ×
7.英数字変換 × ×
8.他英字入力手段 ×
9.ガイド表示 × ×
10.UnDo機能
11.予測カット × × ×
○個数 11


以下、各メーカの補足


F:富士通
2タッチ入力を復活させて早2年、今年度の変更はハイエンド以外でも2タッチガイド表示ができるようになったことに留まっている。
それでも、他社よりも充実した入力補助機能がそろっているため、2タッチ入力を購入基準に入れる際は必ず押さえておきたいメーカの一つ。
また、2009年冬モデルより、メール作成時でもソフトウェアキーボード(2タッチ風と手書きの2つ)が使用できるようになっている。
中国語T9(マルチリンガル対応機種のみ)もこれまで通り使用可能。


英数字の入力手段として、英字トグルができるため、慣れないうちはこれを使うのもよい。


905iや906iより変更する際は、大小変換は*キーでできるようになったことに注意してもらいたい。
かつてのmova-Dシリーズ(三菱電機)のような「*キーで濁点→ソフトキーで句読点に変換」といったことができないため、[7・8]で"、" [7・0]で"。"が配列に含まれていることを知っておくとよい。

また、UnDoは他社とほぼ同等の10回まで出来るようになった1回しかできない(他社は複数可能か確定UnDo)


表を見る限り多機能だが、それ故に呼び出しにくい機能もある煩雑さもみられるものの、他メーカに比べ、地味に手を加えてくるため、今後の機能整理や改良に期待したい。


N:NEC
905iからインライン入力ができるようになってからは特に変更点はない。
それでもMojic Engineを採用する前よりは遙かに良くなっている。


文字キー長押しで入力方式を変更できるため、T9と使い分けることも可能。
辞書を鍛えてあればT9に変更するのも悪くはない。


P:パナソニックモバイルコミュニケーションズ
おなじみのニコタッチを唯一採用しているメーカ(ただし、au向けにはない)。
句読点ダイレクト入力は、普通の2タッチ入力では使えず、ニコタッチにすることで使用可能となる。
この点と配列以外は、基本的な部分を同じくしている。


2008年冬モデルからみられた、ニコタッチでの「か」や「け」からの変換に「ヶ」が入っていた問題は、今回の冬モデルで改善され、2タッチ入力時と同じ動作に統一されている。
また、2009年夏モデルより、変換がiWnnにバージョンアップされた。


半角英数を入力するためには、カナ英数変換を使用するとよい。
UnDoはCtrl+Z相当ではなく、確定UnDo(再変換)となっているため、他社より変更する場合は注意。


国内ドコモ向けではインライン入力が唯一対応していないため、今後に期待。


SH:シャープ
2009年度の冬モデルにて、インライン入力が可能となっている。
それ以外は特に変わっていない。

型番ルール変更前の機種(906i706iまで)から機種変更する際は、Nキーロールオーバがなくなっていることに注意。



docomo 総評
オススメはFとP。
どちらも全キャリアを通しても高い水準のものを備えており、機種選択では外せないメーカである。
Fは多機能故に自分の入力スタイルに合わせた文章作成がしやすく、Pは配列が比較的覚えやすいニコタッチにより、初心者でも比較的覚えやすい。
要は、普通の2タッチ入力を使うならF、ニコタッチを使いたいならばPといった具合。

ちなみに、2タッチのガイド表示を備えているのは、全キャリア通してFとP(au向けは除く)のみ。
Fは配列表示、Pは次の入力文字一覧が表示 という違いはあるが、いずれも習熟の際に活用したい。


また、FとNはT9が使えるが、FのT9はあくまでも中国語向けのため、英字入力には適していない(Nより手間がかかる)。
T9を使うならN一択でよい。


au by KDDI

2タッチ入力を採用しているメーカは以下の7社。
CA、H:カシオ日立モバイルコミュニケーションズ
K:京セラ
P:パナソニックモバイルコミュニケーションズ
S:ソニーエリクソンモバイルコミュニケーションズ
SA:三洋電機
SH:シャープ
T:東芝


このうち、CAとH、Pは基本ソフトが共通


au 機能対応表

機能/メーカ CA,H,P SA SH
1.強制確定回避 × × ×
2.*キー変換
3.句読点ダイレクト × × × × × ×
4.インライン入力
5.ソフトキーカナ英数 × × ×
6.Nキーロールオーバ ×
7.英数字変換 × × ×
8.他英字入力手段 × × × × ×
9.ガイド表示 × × × × × ×
10.UnDo機能
11.予測カット × × × ×
○個数


補足

  • auは、以前より*キーによる濁点/大小変換の併用を共通仕様としている
  • また、アウトライン入力になることもない
  • UnDoについて、SH以外は基本的に確定UnDoである

東芝とシャープの機種について追加調査次第、加筆予定
(予測変換カットの詳細を十分に調査しきれていないため)


以下、各メーカの補足


CA、H:カシオ日立モバイルコミュニケーションズ
P:パナソニックモバイルコミュニケーションズ

基本ソフトが共通となっているため、3社まとめて解説する。

去年度の冬モデルよりNキーロールオーバが採用されたが、それ以降、特に変更点はない。
それでも、2タッチ入力で英数カナ変換が使用できない以外は、入力補助は平均以上の水準といえる。


また、去年にもあった「長文入力時に予測ウィンドウの表示/クローズを繰り返し、文章が上下に移動する」といった現象は未だ顕在している。
予測変換はOFFにしていれば問題はないが、ONにしている場合は長文入力に注意すること。


K:京セラ
今回、冬モデルのラインナップはないものの、夏モデルまでの傾向として、変換がiWnnに変わった以外は特に変更点はない。
英数字・記号入力による強制確定はあるが、iWnnになって予測変換は良くなってきていること、Nキーロールオーバも以前より健在といった利点は失われてはいない。


S:ソニーエリクソンモバイルコミュニケーションズ
東芝系のKCPを採用しているメーカーで、UIもほぼ同じだが、変換以外での相違点としてはNキーロールオーバがないことが挙げられる(au内では唯一非採用)。
2タッチ入力でも英数カナ変換は可能で、下ソフトキーにより、タブ移動が可能。


SA:三洋電機
今回、京セラよりサンヨーブランドとしてSA001が世に出てきた。
長らく2タッチ入力を採用してきたメーカでもある。

英数カナ変換は使えないが、以前とは違い、Nキーロールオーバが採用された。
ドコモのF同様、入力方式の変更なしで英字トグルも使用でき(採用はこちらが先)、UI面では初心者にも使いやすいといえる。
しかし、SA001はキー配置が独特で、ハードウェア面で敬遠される可能性がある点は残念。


SH:シャープ
去年度より変更はなし。
変換も含め、基本はドコモのシャープ製と同様だが、Nキーロールオーバ有り、2タッチでの英数カナ変換が可能な点もあり、同社製の中では一番マトモな出来といえる。
しかし、他キャリア向けの端末を見る限り、今後の改善への望みが薄い。


T:東芝
基本はATOKを採用し始めた去年度と変わらないが、英数カナ変換の操作がSと同様に、下ソフトキーによるタブ操作となっている。
UIも共通化を図ったことに起因していると思われる。

また、同ATOK搭載機のCAやHと比べ、英数カナ変換が使えることと、長文入力による弊害(同キャリアのCA、H、Pの項を参照)がない点で差をつけている。


2年以上前の同社機種(WxxT型番)より変更する場合は、「変換がMobile RuPoではないこと」と「変換前に入力できる文字数が約半分に減っている」点に注意してほしい。
その分、予測を使う場合は初めから頭出しできることと、英数字や記号入力による強制確定が無くなっているメリット等もあるため、余程のこだわりがなければ機種変更しても良いと思う。


ちなみに、数字キーを押し続けていると、連続で入力されてしまう挙動も健在。



au 総評
仕様を統一させているだけあり、平均的に高い水準となっているのが他のキャリアと異なる。
その中でもオススメしやすいのはATOK搭載機であるCA、H、P、T。

特にTは、2タッチ入力でも英数カナ変換が使える上に、CA等の長文入力による弊害もないので、まず迷ったらTをチェックするのが良いと思われる。

また、SA001のキーが受け入れられるなら、英字トグルも可能なSAにしても良いかもしれない。
実際、他のメーカにも採用してもらいたいところでもある。


しかし、Wnn系はATOK系以上に強制確定等の仕様のばらつきが多いため、実機の確認ができるならしておきたいところ。


ソフトバンクモバイル

2タッチ入力を採用しているメーカは以下の4社。
CA:カシオ計算機
N:NEC
P:パナソニックモバイルコミュニケーションズ
SH:シャープ

※Tはかんたんケータイ以外のラインナップがないため、今回は割愛。


ソフトバンク 機能対応表

機能/メーカ CA、N SH
1.強制確定回避 × ×
2.*キー変換 ×
3.句読点ダイレクト × ×
4.インライン入力 × ×
5.ソフトキーカナ英数 × ×
6.Nキーロールオーバ × × ×
7.英数字変換 × ×
8.他英字入力手段 ×
9.ガイド表示 × ×
10.UnDo機能
11.予測カット × × ×
○個数


以下、各メーカの補足

CA:カシオ計算機
N:NEC

このメーカは、基本ソフトが共通のため、まとめて解説する。


基本はドコモのNと同じで、T9が使用可能な点や文字キー長押しで入力方式の変更が出来る点も同様である。
唯一違うのは、メール作成時のインライン入力ができないこと。
これは、ドコモでいうとN904i時点のものと同様である。

MNP(携帯電話ナンバーポータビリティ)の際は、インライン入力不可な点には特に注意をしてもらいたい。
また、auから移行する場合は、変換から何まで異なるため、実機確認が出来ればやっておきたい。


P:パナソニックモバイルコミュニケーションズ

ドコモ向けと同様、ソフトバンク向けではニコタッチも採用している。
このニコタッチで、句読点ダイレクト入力も可能となり、辞書登録等の手間もなくなる。

また、2009年夏モデルより、こちらも変換がiWnnとなっている。


基本的な仕様はドコモ向けと同様のため、ソフトバンク向けではMNPでも唯一見劣りの見られないメーカである。


SH:シャープ
去年度より変更点はなし。

英数字入力による強制確定あり、Nキーロールオーバなし、*キーによる濁音化もできない、大小変換はソフトキーによって行うところも、全てが今まで通り。
メーカーに思い入れがなければ、他社の機種にした方がよいかもしれない・・・。


ソフトバンク総評
オススメはニコタッチが使用可能なP。
・・・というより、2タッチ入力前提の端末選びでは、ほぼP一択で良いともいえる。

T9を使うならNやCAでも問題ないが、ドコモ向けの同社機種に比べて見劣りを感じる。


しかし、上記とは別に、iPhone用のATOKを開発中という話もあるので、いつか導入してフリック入力にするのも選択肢の一つ。


今回の感想

今回は、去年度に比べて著しい変更が少なかったともいえます。
それだけ、開発リソースを割けないか、仕様が固まってきたのでしょう。


あの富士通でさえ、今回はガイド表示の標準化に留まったくらいですから。
とはいえ、あの完成度を超えるメーカが現れていないのも事実。
今回のエントリでは割愛しましたが、富士通はタッチパネルでの文字入力を強化しており、より多彩な文字入力が出来るようになっております(良くなったかどうかは別として)。


反面、シャープには失望に近い気持ちも抱いております。
いくら改良の優先順位が低いといわれても、あの完成度では正直使う気になれない自分がおります。
(Fと比べてしまう自分もいけないのですが)
SHのメール周りを含めた機能を褒めちぎっている某ジャーナリスト様やレビュアー方には悪いのですが、最低限あればいいやという方以外にはおすすめしづらいメーカとなってしまいました。


最後に

このエントリを書いているときに思ったのですが、結局どのキャリアでいるのがベストかということに関して、一つの結論が出てきました。
「個々のメーカでの完成度」という点で見れば、FやPを擁するドコモなのですが、「同一キャリアでのメーカ変更によるリスクが少ない」という点では、共通仕様が多くメーカによる違いが少ないauがよいと考えております。
今回出した表でも、○が最も多かったのはドコモのFですが、平均的に多いのはauだった点からもご理解していただけるのではないかと思います。


このことから、文字入力に関しては、自分の機種変更の傾向もしくは贔屓にしているメーカがあるかでどうしていけばよいかは変わってくるはずです。


キャリアはどうであれ、いつか自分にとって買って良かったと言える携帯に巡り会えれば、と思います。